食品リサイクル法とは
食品の製造や調理過程で生じる動植物性残渣、食品の流通過程や消費段階で生じる売れ残りや食べ残し等が食品廃棄物です。また食品リサイクル法では食品廃棄物のうち肥料、飼料等に有効利用されるものを「食品循環資源」と呼ぶことにしています。
食品リサイクル法は、循環型社会を目指し、平成12年に制定された法律です。 第一段階として食品廃棄物の発生抑制、第二段階として食品廃棄物の再生利用、および熱回収、ならびに減量に取り組むことが謳われています。
簡単に言うと、食品加工工場で出る加工クズや、小売店で出る売れ残り商品、飲食店で出る食べ残しなどの、いわゆる「生ゴミ」(法律上では「食品循環資源」と表記されています。本文でも以下「食品循環資源」と表記します)の発生を抑制し、それでも出てしまうものに関しては、何らかの形でもう一度循環させることが求められているということです。
この法律の対象になるのは食品関連事業者で、具体的には以下のような事業者です。
食品の製造・加工業者 | (例)食品メーカーなど |
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食品の卸売・小売業者 | (例)各種食品卸、 スーパー、コンビニ、八百屋、百貨店等の食品の小売業など |
飲食店および食事の提供を伴う事業を行う者 | (例)食堂、レストラン、ホテル・旅館、結婚式場、ディナークルーズ船など |
食品リサイクル法では、食品循環資源は、再生利用・熱回収・減量の優先順位での取り組みが求められています。
再生利用とは、家畜の飼料とすることや、生ゴミを処理して肥料として農場に循環させることを指します。平成19年の法律改正により、炭化製品(石炭の代替物として燃料として使用するもの)と、エタノール(自動車の燃料などが主用途)が再生利用に追加されています。
ちなみに、再生利用を行う場合には優先順位があり、まずは飼料化を考えます。飼料化できないものについて、肥料、炭化製品、エタノールに加工して循環させることになっています。
熱回収は再生利用が困難な事業者がある一定の条件を満たした場合に認められています。燃やした場合の熱量がある一定以上あることが要件で、これにより化石燃料などの使用が控えられる効果が期待できます。熱回収については平成19年の法律改正により加えられた項目です。
減量は、再生利用も熱回収もできない場合の最終手段の位置づけです。つまり廃棄処分をするのですが、その場合でも出来る限り減量することが求められています。減量時に出る排水の処理についてや、減量後の廃棄物についての処理方法について表記されています。
食品リサイクル法の重要POINT
- 法律の対象となるのは食品の加工・流通に係わる事業者、及び飲食店
- 食品循環資源の発生抑制が義務づけられている
- 発生した食品循環資源は、再生利用>熱回収>減量の優先順位で処理することが求められている。
平成19年法律改正のポイント
食品リサイクル法は制定時には努力目標の意味合いが強いものでしたが、平成19年の法改正により、その性格が大きく変化しました。ここでは対象事業者に影響が大きいものを中心に解説します。
(1)個々の企業に再生利用等の実施率目標が設定されました
食品関連事業者ごとに再生利用等の実施率目標が新たに設定されることになりました。対象事業者は、毎年、この目標値をクリアすることが求められることになります。
再生利用等の実施率の公式は下記の通りです。
再生利用等の実施率=その年度の(発生抑制量+再生利用量+熱回収×0.95+減量量)÷その年度の(発生抑制量+発生量)
上記の公式を用いて、自社の実施率を計算します。今度はこの数値を基準に次年度の目標値を計算していきます。
実施率が20%以上50%未満の場合は、今年度の実施率に2%足した数値が目標値になります。つまり、今年度の実施率が35%だった場合、次年度の目標値は37%になるということです。
ちなみに加算される数値は50%以上80%未満の事業者では+1%、80%以上の事業者は維持向上となっています。
(2)業種別に再生利用等実施率の目標が設定されました
個別企業ごとの目標値の設定と同時に、業種全体の目標値も設定されました。この目標は平成24年度に業種全体での目標達成が見込まれる目標とされています。
業種 | 再生利用等実施率の目標 |
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食品製造業 | 85% |
食品卸売業 | 70% |
食品小売業 | 45% |
外食産業 | 40% |
(3)食品廃棄物等多量発生事業者の報告義務
「食品廃棄物等多量発生事業者」とは、食品廃棄物等の前年度の発生量が100トン以上の食品関連事業者のことをいいます。
食品廃棄物等多量発生事業者は、毎年度、主務大臣に、食品廃棄物等の発生量や食品循環資源の再生利用等の状況を報告することが、義務付けられました。
現状では報告義務だけですが、今後法律の改正により罰則規定や著しく目標値を下回る企業の公表などが行われる可能性もあります。
また、現在100トンとなっている発生量の基準も、将来的に引き下げられる可能性があります。
食品リサイクル法の詳細については農林水産省のホームページでもご覧いただけます。(http://www.maff.go.jp/j/soushoku/recycle/syokuhin/s_about/index.html)
食品リサイクル法の企業経営への影響
現状では、食品リサイクル法は食品廃棄物等多量発生事業者以外は報告義務もありませんし、罰則規定もありません。よって、食品リサイクル法を無視したとしても直ちに企業経営に影響が出ることは考えにくいと思います。
しかし、コンプライアンス(法令遵守)に対する意識は高まっています。法律上の報告義務がないからといって無視するようなことがあっては、中長期的には企業経営に大きな影響を及ぼすことは考えられます。
例えば新規の取引先を探している大企業が、再生利用等実施率の提出を求めるということは十分に考えられますし、既存の取引先でも提出を求められることも考えられます。そうなってから取り組みを始めても遅いのです。
逆に、顧客の支持を得るために、再生利用等実施率の数値を積極的に公開し、コンプライアンス意識の高い企業であることをPRすることもできると思います。
当社では、自社内での食品循環資源の再生利用を図る企業様を、業務用生ゴミ処理機の販売、及びコンサルティングで全面的にサポートしています。
貴社の取引先に安心して取引を続けていただくためにも、お客様の支持を得るためにも、再生利用の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。